登山口の五合目に着いたら、すぐに出発せず、最低30分は軽く散歩をしたり、ストレッチをしておこう。これは、体を高度に慣らすためだ。五合目でも標高は2,500m前後、じっくり体を慣らして高山病対策をしておく必要がある。
また、出発前から水を十分に補給しておくべきだろう。とくにエアコンの効いたバスや車に長時間乗車していた場合、軽い脱水症状を起こしているケースがあるからだ。
水分を摂るとトイレが気になるが、トイレはこれから山小屋ごとにあるので心配不要。また昼間は紫外線が強いため、日焼け止めを塗るなどの対策も忘れずに。
行動中の水をしっかり買い揃えたら、さぁ出発!
歩きはじめの30分~1時間ほどの体が温まってくるまでは、ごくゆっくり歩くのが登山の基本だ。富士山の主要コースは、五合目から六合目にかけては緩斜面で、ウォーミングアップにちょうどよい条件となっているので、この間はあせらずにゆっくり歩こう。
六合目からは傾斜が強まり本格的な登りになる。歩行ペースは呼吸が無理なく続く範囲にとどめ、歩幅は普段よりも小刻みにしよう。姿勢は前かがみならないよう背筋を伸ばし、靴底全体で地面をとらえるようにして歩くと、バランスが安定する。
また、歩き方とは関係ないが、行動中は携帯電話の電源は切っておいたほうが良い。富士山では電波は入るが、かなり弱い。その状況では電源を消費しやすいので、山頂に到着する頃にはバッテリー切れとなってしまう。非常時のためにも、使うとき意外は「電源はOFF」がポイントだ。
登山では疲れたら休憩するというより、疲れる前に休憩をとって、コンディションを維持する。富士山は頂上までひらすら登りが続くので、もし途中でぐったり疲れてしまったら登山の続行は困難だ。そこで30~40分歩いたら5~10分の休憩をはさみ、このリズムをなるべくくずさないよう登っていく。
休憩地は山小屋周辺やほかの登山者の妨げにならない登山道わきのスペースなど。コースを外れず、落石や滑落の危険がないところを選ぼう。
長い時間を歩く登山では、日常の昼食といった決まった食事以外にも、休憩ごとにエネルギー源を補給する。そのための食料が行動食。糖質を多く含む菓子類やフルーツ、汗とともに失われたミネラル分を補給できるサプリメント食品などが適している。
水分は休憩時に限らず、歩行中でもこまめに補給すると効果的。飲料はペットボトルのお茶やスポーツドリンクなど出発時に1リットル程度用意し、あとは途中の山小屋で購入するとよい。
もし登山中にアクシデントが起こったら、迷わず下山しよう。富士登山のアクシデントで多いのは、頭痛や吐き気。これは高山病の兆候である。高山病は酸素吸入によって一時的に緩和することもあるが、登り続ける限り、改善する例はあまりない。対処の基本は登山を中止して下山することだ。
外傷やネンザなどの場合は応急処置をする。そのための救急薬品は登山の必需品だ。また吉田口の七合目・八合目と富士宮口八合目には救護所がある。重大な事故の場合は、携帯電話か山小屋から110番通報をして救助を求める。
夏であれば台風が近づくケースがあるが、台風がまだ遥か遠くにあったとしても、富士山では大きく影響を受けるもの。登山して大丈夫かどうかは、直前情報をしっかりチェックしておこう。なお、台風が接近したら登山は不可能だ。
また、行動中に急に天候が崩れるケースも決して珍しいことではない。周囲の状況をみて判断することになるが、思い切って下山することは正しい行動である。とくに雷が鳴ったら、すぐに登山はとりやめ、近くの山小屋に避難することが大切だ。携帯電話、カメラなどの電気製品の電源はすべて落とし、通り過ぎるのをじっくり待つしかない。雷が鳴っての行動は、自殺行為だ。
ごく簡素な施設の山小屋も、高所の環境では、貴重なオアシス的な存在となる。癒しを求めることはできなくても、エネルギー補給と、寒さや風をよけ体を休ませることができる貴重な拠点だ。
「山小屋のサービスが悪い」という人もいるが、山小屋に泊まる最大の目的は頂上に立つための足がかりとすること。ひと時でも体を休ませ、高度に慣れることを優先して考えれば、多少のことは気にしない割り切りも、山小屋利用のコツだろう。
そんな山小屋で、少しでも清潔・快適に過ごしたいと考えるなら、バンダナを枕カバーにしたり、ウェットテッシュを持参して汗をぬぐうなど工夫をしよう。
子どもに限らず、コレクションは楽しいもの。富士登山でのコレクションと言ったら、何といっても登山口で買った金剛杖(1000円程度)。山小屋を通過するたびに焼き印(ひとつ200円程度)を押してもらうことができるので、まさに日本一のスタンプラリーとなる。
他にも、登山道に普通に落ちている、おもしろい形の溶岩や軽石などを観察・収集するも良し。デジカメを持たせれば、富士火山ならではの傑作写真が撮れるだろう。また、袋菓子を持っていけば、気圧の影響でパンパンに膨らんだ袋はきっと大人でも楽しめるだろう。
最近では、「コスプレ登山」登山も流行りだ。揃えの帽子やTシャツで登ったり、おかしな格好で登る人はよく見かける。装備不足にならない程度の格好で、富士登山を楽しもう!
九合目付近まで登ってくると、いよいよと期待が高まってくる。夜間登山なら日の出の時刻が気になってくる。ただし頂上直下は傾斜が強く、高山病の兆候も出やすい条件だけにオーバーペースは禁物。これまで通り、休憩をはさみながら、無理のないペースで登っていこう。
もし息が続かなくなったら、立ち止まって深呼吸する。ゆっくりと息をはいて深く吸い込む複式呼吸をするだけでもだいぶ違う。あとは気力でがんばろう。
七~八合目の山小屋に泊まり、頂上でご来光を迎えるには、山小屋を午前1時前後には出発する。夜間の気温は10度を下回るので、まずセーターやレインウェア、帽子、手袋などで防寒する。
照明はヘッドランプを使う。夜間も登山者が列をなし、その列について登っていけば、道に迷うといった心配はない。ただし、体力的にはハードだ。もし不安を感じたら、朝まで山小屋でゆっくり休み、明るくなってから頂上を目指そう。
富士宮の山頂には夏の間、郵便局がオープンしている。事前に手紙を用意して山頂から出すのも良いが、郵便局や周辺の売店では、さまざまな記念はがきや登頂証明書代わりのはがきなどが準備されている。夏休みの思い出には最高となるはずだ。
また、山頂で最高のお土産と言えば、何と言っても富士山山頂写真家の小岩井大輔氏の写真集だ。山頂で販売されている写真集は、山頂特別バージョン。小岩井さんの手が空いていれば、サインを貰ったり、記念撮影を撮ったりすることも可能だ。ぜひ、山頂山小屋「扇屋」に立ち寄って、小岩井さんの写真集「Mt.FUJI3776 富士山頂の世界」をゲットしよう!
写真集の中身を少しだけ見たい方はこちら
小岩井さんの富士山頂日記はこちら
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小岩井さんのホームページはこちら
無事、頂上に登り着き、これからご来光を待つなら、まずは体が冷えないうちに防寒を整えよう。ご来光のあとは、山頂火口を一周するお鉢めぐりへと足を延ばしたい。お鉢めぐりは1週約50分。ハイライトは、なんといっても富士山頂の最高点・剣ヶ峰への登頂だ。
ただし、風雨が強いときや体調がすぐれない場合、無理は避けよう。各コースの頂上に登り着くことで富士山登頂は達成できた。場合によっては五合目まで安全に下山することを優先しよう。
登頂した安堵感からか、山頂では高価だからか、忘れがちなのが下りの飲料水。これを忘れると、ノドカラカラの状態で砂漠のような道をえんえん歩くことになる。
特に河口湖ルート(吉田ルート)へ下山するときには、八合目付近で小屋近くを通過する以外は、まったく店がない下山路を歩くことになる。
ご来光後、燦々と照りつける日差しの中、木陰も沢水もない溶岩の乾いた道。しかも下りの距離も高さも日本一。そんな中を4時間以上歩くことを考えたら、高価でも山頂で飲料水を確保しておこう。
ついでに、トイレも遠いゾ。
みごと登頂を達成できても、無事、下山するまでが富士登山だ。気を引き締め直して下山をはじめよう。主要4コースのうち富士宮ルートと御殿場ルートは、登り着いた頂上から同じコースを下りはじめるが、吉田ルート・須走ルートは下山専用道へ進む。
須走口と吉田口の下山路は八合目で分岐するので、間違いのないように必ず標識を確認しよう。間違えると、もう一回8合目まで上りなおすことになるぞ!
なお、下りで重要なのは、砂&土埃対策。靴に入り込む砂はスパッツで防ぎ、砂ぼこりがひどいときはマスクやゴーグルで対策しよう。また下りではストックや登山杖が役立つ。
1961年生まれ。高校時代から社会人山岳会に所属し、登山とクライミングに熱中する。現在、『山と溪谷』『ヤマケイJOY』といった山岳雑誌で山岳ライター・カメラマン
として活躍。『富士山ブック』では2003年の創刊から関わり、毎年、富士山に登っている。
著書に
『アルペンガイド 八ヶ岳』
『展望の山歩きベストコース 関東周辺』
『今から始める山歩き』
『マイカー登山ベストコース50 関東周辺』
『マイカー登山2 ベストセレクト50関東周辺&日本アルプス』
(すべて山と溪谷社刊)などがある。
登山口別コースガイドや、山頂の山小屋に設置されたQRコードから取得できる登頂認定証など、携帯ならではのサービスを用意。ぜひ「山と溪谷モバイル」にアクセスしてみてください。
※「富士山に登ろう2009」のコーナーについては、パケット通信料がかかります。また、一部コーナーでは別途情報料がかかります。